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京都地方裁判所 昭和26年(行)11号 判決

原告 長谷川省三 外二名

被告 国

一、主  文

原告長谷川省三に対する別紙目録第一号記載宅地の買収対価金三万四十九円二十五銭はこれを金六万六千九百円に、原告桐山半九郎に対する別紙目録第二号記載宅地の買収対価金三万八千三円三十五銭はこれを金七万六千七百三十四円に、原告桐山菊次郎に対する別紙目録第三号記載土地の買収対価金八千六百二十四円はこれを金一万六千八百円にそれぞれ増額する。

被告は原告長谷川省三に対し金三万六千八百五十円七十五銭、原告桐山半九郎に対し金三万八千七百三十円六十五銭、原告桐山菊次郎に対し金八千百七十六円を右各金額に対する昭和二十六年七月三日以降各完済に至るまでの年五分の割合による金員を附加して支払え。

原告その余の請求は棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告等訴訟代理人は、被告の原告長谷川省三に対する別紙目録第一号の宅地の買収対価金三万四十九円二十五銭は之を金二十二万三千円に増額する。被告は右原告に対して金十九万二千九百五十円七十五銭に昭和二十六年七月二日より支払済に至る迄年五分の割合の金員を附加して支払え、被告の原告桐山半九郎に対する別紙目録第二号の宅地の買収対価金三万八千三円三十五銭は之を金二十五万五千七百八十円に増額する、被告は右原告に対して金二十一万七千七百七十六円六十五銭に昭和二十六年七月二日より支払済に至る迄年五分の割合の金員を附加して支払え、被告の原告桐山菊次郎に対する別紙目録第三号の宅地の買収対価金八千六百二十四円は之を金五万六千円に増額する。被告は右原告に対して金四万七千三百七十六円に昭和二十六年七月二日より支払済に至る迄年五分の割合の金員を附加して支払え、との判決を求める旨申立て、その請求の原因として、原告長谷川所有の目録第一号、原告桐山半九郎所有の目録第二号、原告桐山菊次郎所有の目録第三号記載の宅地は何れも農業者に賃貸中であつたところ、京都市洛南地区農地委員会は各賃借人の請求により昭和二十六年三月自作農創設特別措置法(以下自創法と略称)第十五条により買収計画を立て買収期日を同年七月二日縦覧期間を同年三月十日乃至二十日の間買収対価別紙目録記載の通りとして告示した各原告は買収対価を不服としてそれぞれ異議申立及び訴願をしたところ何れも理由なしとして却下された。それで京都府知事は各原告に対して別紙目録記載の対価を以て買収の時期を昭和二十六年七月二日として買収令書を発行し、各原告は同年十月十七日各令書を受領した。洛南地区農地委員会、京都府農地委員会が各原告の異議申立又は訴願に対して答うるところは買収対価は自創法施行令第十一条により京都府知事の定める基準によつて算定したものであるから正当であると云うだけであつて他の理由はない。自創法による農地の買収対価は同法第六条により賃貸価格に対する一定の率を乗じたる額の範囲において定むべきであるが、同法第十五条による物件の買収は一定の基準によらずその物件の時価を参酌して対価を定めなければならないのであつて、仮令自創法施行令第十一条の規定により府知事の定めた一定の基準に従つたとするも、その基準の対価と時価に著しい懸隔があるときは右基準による対価の決定は時価を参酌しなかつた結果となり、自創法第十五条に違反するものであつて、右基準によつて対価を決定したと云うだけではその対価は適法なるものとすることは出来ない。本件宅地の所在地竹田区は昭和六年四月京都市に編入された元竹田村の地区であつて伏見の市街地に接続し東に京都市電伏見線、中央に奈良電鉄が通過し地区内に前者は四、後者は二の停留場があり交通至便で烏丸四条、河原町四条等京都市の中心部へ十五分乃至二十分で達し得られる至便の位置にあるので、戸数は逐年増加し約二十年前には五百戸位であつたのが、今は千五百戸にもなつて居り尚益々増加の趨勢にあり、地区の周囲部には多数の工場が設置せられ中央部は住宅地区で全体として市街地の形を成し、住民中農業者は兼業農家を併せて僅に二百戸全住民戸数の十三%位に過ぎず、その他は勤人、工員等が多数である。かゝる情況であるから宅地は甚だ払底して(周囲に田はあるが低湿で一米以上も盛土しなければ宅地とならず、而かも盛土に供すべき土砂は附近にはないので遠方から運搬して来なければならないのと農地の宅地変換は農地調整法で制限されているので宅地を拡張することは不可能な状態である)現在宅地の時価は坪千円以上である。それを時価については何等の調査も為さず自創法施行令第十一条を盾にして僅に坪百三十四円乃至百五十四円で買収するのは余りにも時期を無視するものであつて、自創法第十五条に違反するものなること明かである。竹田地区では農地は闇値反六万円位で売買されている実状である農地が坪二百円もするのに宅地がこれより安いと云うのは甚だ不合理である。本件宅地の買収対価は自創法施行令第十一条により京都府知事の定めた率である賃貸価格の三百八十倍で算出されたものであるが、京都地方法務局では登録税課税標準価格は賃貸価格の六百倍で算出している登記の課税標準価格は一般の時価に比較して甚だ安いのが普通であるが、本件宅地の買収対価は登記所の標準価格と較べても著しく安く、それが如何に時価と遠く懸け離れて安いか推測される。又固定資産税法に基く土地の評価は時価によるものであるが、京都市長が決定した本件宅地の昭和二十六年九月三十日の時価は別紙目録表示の通りであつて、之と比較して見ても本件宅地の買収対価は時価とは甚だしく懸隔があり不当に安いものであることは明瞭である。仍て自創法第十五条第三項、第十四条により買収対価の増額を求める為本訴に及んだ。因に本件土地に設定されていた賃借権は何れも堅固ならざる建物の所有を目的とするもので存続期間の定めはなかつた。而して昭和二十六年十月一日よりの改訂前においては坪一円七十四銭の停止統制額を右の地代としていたと陳述し、被告の答弁に対し被告は自創法第十五条には「時価を参酌してこれを定める」とあり単に「時価による」とは規定していないから、買収対価が時価と懸離れてもよいかの如く論ずるが時価を参酌して定めるとは時価によることを原則とし、幾分時価より高下して買収対価を定むべき特別の事情(例えば他物権の設定等)あるときは時価を高下して買収対価を定めるの趣旨であると解すべきであつて、何等時価より低く買収価格を定むべき特別の事情のない本件宅地の買収は時価によるべきである。又被告は京都府知事の定めた宅地買収基準は憲法第二十九条に所謂正当なる補償に該当すると主張するが、本訴が自創法第十五条或は同法施行令第十一条又はこれに基く京都府知事の定めた基準の合憲性を争うものならば兎も角、特定の宅地の買収価格が時価を参酌して定められたものであるか否かを問題とする本訴においては憲法論は的外れであり無用の論である。又被告は京都府知事が定めた基準は昭和二十五年七月三十日現在における土地台帳法による賃貸価格に三百八十五を乗じたもので、之によつて算出した金額は全国の平均の時価に適合していると論ずるが、本件で問題となつているのは特定の土地の買収価格が時価に相当するか否かであつて、右基準により算出した土地の価格が全国的平均に適合しているか否かではないのであるから、此の点に関する被告の論議も的外れである。たとい全国平均的に賃貸価格に対する一定の倍率で算出したとしても、特定の土地について見れば時価より著しく高いこともあれば又反対に著しく低いこともあるべく、賃貸価格に対する全国平均的倍率を用いて算出したと云うことの故を以て本件宅地の買収価格が時価を参酌して定められたものであることを推論することは出来ないと述べた(立証省略)。

被告指定代理人は原告等の訴はこれを棄却する。訴訟費用は原告等の負担とするとの判決を求め、答弁として原告等所有の宅地(別紙目録第一号乃至第三号に記載の物件)に対して自創法第十五条により訴外京都市伏見区洛南地区農地委員会が買収計画を樹立し、これに基いて訴外京都府知事が昭和二十六年七月二日を買収の時期とした買収令書を交付し、これが同年十月十七日原告等に到達したことは原告等の述べている如く、被告も之を認める。尚本件土地に設定されていた賃借権並に地代が原告主張の通りのものであつたことも認める。自創法第十五条による物件の買収対価はその物の時価を参酌して定めるべきであつて、訴外京都府知事が定めた対価算出の基準は時価と著しい隔りがあり、右の基準は自創法第十五条に違反するものであり、その基準によつて算出された対価は適法なものではないと原告等は主張しているが、原告等は同法第十五条第四項にいう「時価を参酌してこれを定める」とあるのを「時価による」と誤解しているようである。(参酌する)とは「時価による」ということとその意義を異にするものであり、買収対価が憲法第二十九条第三項にいわゆる「正当な補償」に該当するものであるならば必ずしも時価そのものによることを要しないことを規定したものである。憲法第二十九条第三項にいう「正当な補償」の意義は国が私有財産を公共の為に用うる場合等においては権利者に与える損失の全部を補償する趣旨ではなく、その制度の性質等から見て権利者において損失を或る程度受忍すべきことを社会上正当と認められる場合には、その受忍すべき程度を考慮して損失の一部を補償すれば足りると云うべく、かかる補償こそ合理的な補償と云うべきである。而して農地改革の如く社会公共的な事業に対しては所有者は或る程度の損失は受忍すべきであり、自創法施行令第十一条の示すところによつて訴外京都府知事が昭和二十六年二月二十七日附京都府告示第百五十六号によつて定めた法律は正当な補償に相当するものと云うことができる。又自創法第十五条第一項の規定により買収する物件の対価は同条第四項において「命令の定めるところにより」として政令に委任しており、且同法施行令第十一条においては土地建物等の対価については都道府県知事の定める基準によると定めている。従つて右に基いて訴外京都府知事が定めた基準は適法であり、本件買収対価は法定対価である。次に訴外京都府知事が定めた基準について案ずるに右の基準においては宅地の買収対価を「昭和二十五年七月三十日現在における土地台帳法による賃貸価格に三百八十五を乗じて得た額とする」と規定しているが、右の額は時価を参酌した正当な額と云うべきである。即ち昭和二十六年頭初における不動産売買価格は全国を平均すれば財産税法施行当時の約七倍となつており、財産税法による宅地の評価額は全国平均賃貸価格の五十五倍となつている。しかも財産税法による評価額は当時所轄財務局長が不動産評価委員会の諮問を経て定めたものであり時価を参酌した正当な評価と云うべきである。而して一般売買価格が前述の通り七倍となつているのであるから、財産税法による平均倍率(五十五倍)を更に七倍した率即ち三百八十五倍を以てその算出基準とすることは正当な基準と云わねばならない。

原告等は本件係争土地の所在する竹田地区は市街地に接続し、宅地が払底している等の理由から特別な対価を考慮すべきであると主張しているが、農地改革の如く広範な社会公共事業を実施する上において特定の地域に特別の考慮を払うことはその事業の性質から見ても考えられるべきことではない。

原告等は一般売買価格の事例を挙げて坪当千円の対価を要求しているが、如何なる計算方法によつてその額が算出されたものであるかについては何等その基礎を示して居らず、唯単に世間の相場がそうであるからと云う丈では根拠のない要求と云わねばならない。一般売買価格は当事者の協議によつて決定されるものでありその時期、その地域、更に当事者間の事情によつて異るものであり、これと本件の場合の買収対価とを同一視することは不合理であり、前述した如く所有者はその損失を受忍すべきは当然である。又原告等は登録税課税標準価格を引用しているが、これは単に登録税課税の標準としてその価格を見積るものであつてこれを以て本件の場合における買収対価とすることも不合理である。不動産の時価とは如何なるものであるかについて案ずるに需要と供給とが均衡を保つた時に生ずる客観的妥当性のある価格を以て時価と見るべきであろう。而して不動産の取引される場合にその事情によつて取引価格が異ることは一般の通例であり、現在の使用者が買受ける場合にその価格は時価よりも低い価格で取引されていることは公知の事実である。本件係争宅地の時価が何程であるかを判定することは困難であるが、原告主張の固定資産課税台帳登録価格を以て一応の時価と見るならばこれと本件買収対価とを比較した場合原告長谷川省三、同桐山半九郎所有の目録第一号第二号の宅地については買収対価の方が低額であることは認めるが、原告桐山菊次郎所有の目録第三号の宅地については却つて買収対価の方が高額となつている。尚前二者の分についてもその差額は坪当百六、七十円であり更に本件の場合は使用者が買受けるものであるから、それが一般に取引される価格は時価を下廻ることが通例であり、それとの差額はより以上に小額となることとなる。

以上述べたところにより自創法第十五条による買収対価算出の基準として訴外京都府知事が定めた基準は被告においても正当なる補償に値するものと信ずるものであり、且つ原告等と同様に買収の対象となつた他の大多数の宅地の所有者がその事業の趣旨を理解して快くその損失を受忍しているにも拘らず、原告等のみがこれを不服とすることは社会の公共事業を認識しない自己勝手な請求と云わねばならないと述べた(立証省略)。

三、理  由

原告等各所有の別紙目録記載の土地につき京都市洛南地区農地委員会が昭和二十六年三月自創法第十五条により買収計画を立て買収時期を同年七月二日、買収対価をそれぞれ別紙目録記載の通りとして公告し、原告等が右買収対価を不服として異議申立及び訴願をしたが何れも理由なしとして却下せられ、次いで京都府知事において右土地を右時期及び対価を以て買収する旨の令書を発行し、同令書が同年十月十七日原告等にそれぞれ交付せられたこと、右土地には何れも原告主張の如き賃借権が設定せられていたこと並に右買収対価は自創法施行令第十一条により京都府知事の定めた基準によつて算定せられたものであることは当事者間に争がない。原告は右土地の時価は何れも坪当千円以上であるに拘らず、時価については何等の調査を為さず京都府知事の定めた基準により僅に坪百三十四円乃至百五十四円の低廉なる価格を以て買収したのは時価を参酌すべきものとせる自創法第十五条に違反するものであると主張し、被告は京都府知事の定めた基準は自創法の委任命令たる同法施行令第十一条に基いて定められた適法のものであり、且つ財産税法による宅地の評価額に昭和二十六年頭初における不動産価格の騰貴率を乗じて定められたもので、時価を参酌した適正価格であるから右基準による本件対価は正当であると抗争するにつき、先づ農地に附帯して買収する土地、物件の対価について規定せる自創法第十五条第四項の規定の趣旨について考うるに、同項は昭和二十四年六月二十日公布法律第二百十五号を以て従前の単に「時価を参酌して定める」となつていたのを「命令の定めるところにより時価を参酌して定める」と改め、対価基準を定めることを命令に委任したから右命令の定める基準によつて決定された対価は一応適法な対価と云わなければならない。しかしながら他面自創法は対価の決定を決して無条件に命令に一任しているものではなく、特に時価を参酌すべきものとせる点に留意しなければならない。自創法が農地については賃貸価格に一定の倍率を乗じた額を以て一率に買収すべきものとせるに反し農地以外の土地、物件については特に時価を参酌すべきものとしたのは両者買収の意義に軽重を認めたが故であつて、農地以外の土地、物件については可及的被買収者の犠牲を少なからしめんとする法意の存することが窺われる。斯く解すると自創法第十五条第四項に所謂時価を参酌して定めるとは当該土地物件の買収時期における客観的に妥当なる取引価格を対価決定の主要資料として取入れるとの意味であると解するのを相当とする。従て命令の定める基準に従つて定めた対価が当該土地の適正時価とさして隔りのない場合には、右基準によつて定めた対価は相当であるとしなければならないが、若し右基準と当該土地の適正時価とが著しく懸離れ、社会通念上右基準による価格は到底時価を参酌したものと考えられないような場合には、たとい右基準自体は被告主張の如き根拠により、これを定める当時の不動産の一般的価格を参酌して定めたもので、一般的基準としては適正なものであるとしてもこれを右のような場合にその儘適用して対価を決定することは自創法が特に時価を参酌すべきものとせる要請に添わないものと云わなければならない。斯る場合には命令の定める基準によることなく当該土地の適正時価を主要資料とし、これに自創法の目的その他広く諸般の事情を考量勘案して対価を決定するのが相当であると解する。被告の主張にして右の見解に反するものは凡て採用しない。

仍て本件土地の買収対価が時価を参酌して決定せられた適正のものであるか否かについて検討するのに、本件土地の買収対価は別紙目録記載の通りで、坪当り原告長谷川省三所有土地は(一)、(二)何れも百三十四円七十五銭、原告桐山半九郎所有土地は(一)、(二)は何れも百五十四円、(三)は二十八円、原告桐山菊次郎所有土地は百五十四円で以上何れも右各土地の昭和二十五年七月三十日現在における土地台帳法による賃貸価格に三百八十五倍した金額であるが、各鑑定人の鑑定の結果を見ると本件土地の買収時期たる昭和二十六年七月二日現在における賃借人が買受ける場合の時価は坪当り鑑定人東条三郎の鑑定によれば全部三百円、鑑定人八木繁雄の鑑定によれば原告長谷川省三所有土地は(一)、(二)何れも三百円、原告桐山半九郎所有土地は(一)が三百六十円、(二)が三百円、(三)が二百四十円、原告桐山菊次郎所有土地は三百円、鑑定人中西三郎の鑑定によれば原告長谷川省三所有土地は(一)、(二)何れも四百八十円、原告桐山半九郎所有土地は(一)は四百円、(二)、(三)は何れも四百四十円、原告桐山菊次郎所有土地は四百円、鑑定人木村文次郎の鑑定によれば(但し同人の鑑定価格はその証言によると賃貸借のないさら地としての価格であると云うからこれを賃借人に譲渡する場合の価格に引下げた。その引下げ率は証人八木繁雄の証言を根拠にしてさら地価格の六十%とした)原告長谷川省三所有土地は(一)、(二)何れも四百八十円、原告桐山半九郎所有土地は(一)は三百六十円、(二)、(三)は何れも四百二十円、原告桐山菊次郎所有土地は三百六十円となつて居り、右各鑑定人の鑑定価格の平均はこれを計算すると坪当り原告長谷川省三所有土地は(一)、(二)何れも三百九十円(賃貸価格の約千百十四倍)原告桐山半九郎所有土地は(一)は三百五十五円(賃貸価格の八百八十八倍)(二)は三百六十五円(賃貸価格の九百十二倍)(三)は三百五十円(賃貸価格の四千八百十三倍)原告桐山菊次郎所有土地は三百四十円(賃貸価格の八百五十倍)となる。而して成立に争なき甲第四号証(昭和二十六年度固定資産課税台帳価格の証明書)、証人千歳周吉、木村文次郎、東条三郎、増田正一、八木繁雄、安川純一の各証言並に本件土地検証の結果を彼此綜合勘案すると、右平均鑑定価格が本件土地の買収時期における時価として略々妥当であると認められる。証人斎藤亮全、藤田貞次郎、桐山松太郎の供述せる売買事例は本件時価認定の資料としては適切でないと認めこれは採用しない。そうすると本件買収対価は原告長谷川省三の所有土地については時価の約三割五分、原告桐山半九郎の所有土地については(一)、(二)は時価の四割二、三分、(三)は僅かに八分、原告桐山菊次郎の所有土地については時価の四割五分に相当するに過ぎず何れも時価の半額以下で著しく低廉なりと云うべく、到底時価を参酌したものとは認められないから本件対価は不当であると云わなければならない。そこで右認定の時価に自創法第一条に掲ぐる目的その他本件に現われた一切の事情を考慮に入れ、本件土地の相当対価を決定すると何れも坪当り三百円で原告長谷川省三所有の別紙目録第一号記載土地の対価は合計金六万六千九百円、原告桐山半九郎所有の別紙目録第二号記載土地の対価は合計金七万六千七百三十四円、原告桐山菊次郎所有の別紙目録第三号記載土地の対価は金一万六千八百円を相当なりと認める。

然らば原告等の本訴請求中本件土地の買収対価を右の範囲において増額を求め、買収令書の金額との差額即ち原告長谷川省三については金三万六千八百五十円七十五銭、原告桐山半九郎については金三万八千七百三十円六十五銭、原告桐山菊次郎については金八千百七十六円及び右各金額に対する買収期日の翌日たる昭和二十六年七月三日から完済に至るまでの年五分の割合による損害金の支払を求める部分は正当として認容すべきもその余は理由がないから棄却すべきものとし民事訴訟法第八十九条、第九十二条、第九十五条を各適用して主文の如く判決する。

(裁判官 岡垣久晃 千葉実二 岸本五兵衛)

(目録省略)

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